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ようこそ ちいさなアトリエカーロカーラへ。
私はこのお店の店長、モエギです。
私のお店では今日も職人が手仕事を続けています。

絵描きのアサギは、今日もおでかけ。
自然のなかにあるあふれんばかりの色彩を集めたり
広がる美しさをスケッチします。

クチュリエのルリはドレス工房でリングピローやヘッドアクセサリーを作っています。

花細工のモモは、色とりどりのお花を眺めては新しいコサージュ作りに励みます。
そして旅人のコンは今日もどこかの町で「とっておき」を探しています。
今日も私のアトリエでは、職人たちが花嫁の幸せのためだけにそれぞれの仕事を続けているのです。

私たちがどうして花嫁のために毎日手仕事を続けるのか
それにはちいさなものがたりがあるんです。
たくさんあるものがたりの中から今日はこんなお話を。

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このアトリエができたばかりのころ。

静かに降り積もる雪の日のできごと。

トントントン

ドアをたたく音が響きました。
窓際のカフェテーブルで紅茶を飲んでいた私は
すくりと立ち上がり、扉を開けます。
静かに降る雪が風に乗り、ふわりと部屋に入ります。
その向こうに立っていたのは一人のおばあさんでした。
大切そうに大きな袋を抱えながら・・・。

ゆったりと微笑むおばあさんを招きいれ
あたたかな紅茶を差し出すと、しわくちゃの両手にカップが包まれます。

「実はね、お願いがあってここに来たんですよ」
ゆっくりと優しく、やわらかな声でおばあさんは続けました。

「これを受け取ってくれませんか?」
袋から出てきたのは、真っ白な白無垢。
空から降りおちるあの雪よりも白い、美しく艶やかな白色。
鶴の絵柄が織り込まれた、見ればすぐにわかる高価な白無垢でした。

「私がね、お嫁に来た時にも着たんですよ」

懐かしそうに目を細めるおばあさん・・・。

おばあさんは恋に落ち、たくさんの祝福を受けて結婚しました。
優しく誠実な旦那様と二人で始めた貸し衣装店。
たくさんの婚礼衣装に囲まれて、たくさんの幸せをお手伝い。
家族との絆、思いやる心、あふれんばかりの幸せに出会ったそうです。

「この白無垢、たった一着から二人で始めたの」

うれしそうに微笑むおばあさん。

大切そうに、懐かしそうに、おばあさんのしわくちゃの手は
白無垢をなでています。

「この白無垢は代々、花嫁の幸せを手伝ってきたんだよ。
今ではもうかすれてしまい、白無垢としての役目を終える時がきたけれど...」

ふと手を止め、私の目をまっすぐに見つめました。

「白無垢の役目を終えてもね、この子には幸せを紡ぐお手伝いをしてほしいの」
「あなたの工房でこの子に新しい命を与えてくれないかしら?」

まるで生き物を扱うように、丁寧にやさしく、おばあさんは白無垢を両手に乗せ
私に差し出しました。
ふわりとこの手が受け止めた時、あたたかな春のひだまりのような
おだやかなぬくもりがあふれたのです。

歴代の花嫁を幸せへと導いた、美しい白無垢。
それはたくさんの思い出を受け止め、たくさんの幸せを紡いできた
本物の白無垢でした。

帰り際、おばあさんが言いました。

「ひとつひとつの衣装にそれぞれの物語がある」
「花嫁さまというのは、結婚式の日に新しい物語を紡いでいくんだよ」
「世界中、どこを探しても見つけられない、自分だけの物語を...」

それからおばあさんは、役目を終えた白無垢をこのアトリエに届けてくれます。

結婚は新しいスタートです。
これから続いていく道を共に歩んでいく、ものづくりがしたいと
強く想ったのは、あの雪の日、おばあさんから手渡された白無垢を
受け取った時でした。

幸せを紡ぐいうこと。
大切に受け継がれるものこそが、花嫁に最もふさわしいんだと私たちは信じています。

おばあさんから受け取った白無垢でクチュリエは今日もリングピローを作っています。
白無垢は今でも花嫁の幸せを紡ぐ日を心待ちにしています。